録音ブースの自作日記

f:id:takurokupopZuga:20200813060355j:plain

 こんにちは。自宅で音楽を録音しています、宅録ポップユニットの『ZUGA』と申します。よろしくお願いします。

 今回は、僕達の録音部屋に日曜大工で作った録音ブースの製作過程についてお話したいと思います。

 ZUGAの宅録部屋は和室です。畳に土壁の和室は、適度な響きがあり、録音には向いているという話も耳にします。僕達もある時期までは、部屋に普通にコンデンサーマイクを立てて、歌を録音していました。

f:id:takurokupopZuga:20200813060455j:plain

 ただ、和室には『密閉性の低さ』という欠点があります。外のクルマや救急車の通る音、近所の犬の鳴き声などの生活音が思いっきり入ってくるのです。コンデンサーマイクは感度が良いですから、そういった余計な音が、一生懸命録音したテイクに入ってしまう事もしばしばでした。そして、密閉性の低さのもうひとつの問題は、歌声が家人や隣人に聞こえてしまうという事です。ポップスにおいてボーカルは一番大事なものです。ボーカルの録音をする時には、歌い手がなるべくリラックスして歌の世界に集中出来る様にしてあげなければいけません。一階でテレビを見ている家人に遠慮をしながら歌っていては良いテイクは録音できないのです。

f:id:takurokupopZuga:20200813063140j:plain

 そんなかんなで「防音ブースが部屋にあればなぁ」という思いが日々募っていきました。しかし、市販のブースは大変高価で、とても僕の様な、しがないインディーズ音楽家が買えるものではありません。そこで、録音ブースの自作を思い立ちました。

 録音ブースを自作するにあたり、まず一番最初に考えたのは、ブースの箱の側は何で作ろう?という事でした。ネットとかでアレコレ検索したりしてたどり着いたのが、石膏ボードを組み合わせて自立させ、そのまま箱として使っちゃう方法。石膏ボードとは、住宅の内壁・天井に最も多く使われている建築材料です。厚みもあり質量もあるので、一定の防音効果は期待できる様です。ただ、石膏ボードはその性質上、強度はあまり無く、本来はそれ自体を自立させて使うものではありませんので、皆さんお気をつけくださいね。僕もこの方式でブースを作るにあたり、長い年月壊れずにいてくれるか、若干の不安はありました。と言って、きちんと木をノコギリで切って釘を打って作る根性も恥ずかしながらありませんでした。(ただ、製作してから1年以上経っていますが、無事に崩れずにいてくれています。)という事で、ホームセンターで石膏ボードを5枚買ってきて、それをボンドとガムテープで接着し組み立て、一応箱状にしました。

f:id:takurokupopZuga:20200813060708j:plain

 その時こだわった点は、接合部分からの音漏れが無い様、入念に隙間を埋めた事です。ガラスや水まわりの目地を補修するシリコーンシーラントで隙間を埋めてやりました。ボード1枚のサイズは90×180㎝、厚さ12.5㎜。電話ボックスより少し広いくらいです。まぁ、ボーカルがひとり入るくらいなら充分な大きさでしょう。

f:id:takurokupopZuga:20200813061354j:plain
 ブースを設置した位置は、録音作業をするためのソフトが入っているパソコンのすぐ近く。音質的な配慮として、マイクケーブルがなるべく短くて済む様に、また、録音中に僕からボーカルに指示が出しやすい場所にしました。

 さて、外側だけ出来た箱の中に入り、扉を閉めてみます。確かに外からの音は大分遮断されている様ですが、声を出すとワンワンと箱の中で反響しまくります。これではまだ防音ブースにはなっても録音ブースとしては使えません。

f:id:takurokupopZuga:20200813062209j:plain

 そこで、内側に貼る、何か吸音効果(音を吸って余計な反射を減らす)のあるモノを探しました。最初は安さ重視で近所のホームセンターで売っていた発泡ウレタン素材の吸音スポンジを買って内側に貼ってみました。(厚さ10mm 1000×2000mm)しかしこれは、あまり思った様な効果が得られず、失敗に終わりました。決してその製品が駄目な製品という訳ではないですよ。今回の僕の用途に合ってなかったのです。念のため…。

f:id:takurokupopZuga:20200813060744j:plain

 そして、結局はネットの通販で音楽用のちゃんとした吸音材を買いました。宅録の雑誌とかにもたまに載っている、SONEX(ソネックス)というメーカーのVLW35という商品です。サイズは61cm x 122cmの8枚入りで、税込みで約3万円でした。やはり一定の効果を得るためには、ケチってはいけない部品があるという事ですね。

f:id:takurokupopZuga:20200813061439p:plain

※価格は当時のものです。

 早速石膏ボードで作ったボックスの内側に貼っていきました。このSONEXの吸音材、メラミン素材という事で、カッターで簡単に切れるので加工がとても楽で助かりました。しかし、注意しなければいけないのは、その材質の特性上、普通のボンドや通常の安い両面テープでは、まず接着できません。お店を色々とまわり、何種類も両面テープを買い、失敗を繰り返し、最終的に上手く貼れたのが、Scotchの『建築用厚手強力両面テープ』という物です。実はこの吸音材、もともと通販サイトのページでは、本体と並んでちゃんと専用の接着剤が売っていたのです。最初からそれを使えばしっかりと貼れたと思うのですけど、「そこらへんで売っる安い両面テープで大丈夫だろう!」と、目先の出費をケチったために、結果的にかなりの散財をしてしまったという訳です。

f:id:takurokupopZuga:20200813060813j:plain

 何はともあれ、防音のための『石膏ボード』と専用の吸音材を貼り終えたボックスがついに完成しました。という事で、早速その中で大声を出してみたり、手を叩いてみたり、トランペットを吹いてみたりしました。防音の効果は自作にしては上出来で、大きなラッパの音でも、外に漏れる音は『小さめの音量でテレビを観てるくらいのレベル』です。中での音の反響もかなり良くなり、吸音材の効果をハッキリと感じました。

f:id:takurokupopZuga:20200813062141j:plain

 そして、ついに本チャンの歌の録りに使って見ました。ただ、録音した物を単体で聴くと良いのですが、オケに混ぜるとボーカルが少しモコモコしています。EQでいじれば使えない事は無いのですが、まだ音響の改善の余地があるな…と。そこから、次のステップとして、ブース内を良い音にするための試行錯誤が始まりました。

f:id:takurokupopZuga:20200813061103j:plain

 まず、Twitterで知り合った音響に詳しい方に、僕が買った吸音材は、中高音は吸音するけれど、低音にはあまり効果が無い事を教えていただきました。「ああ、そうか!録り音がコモッてたのは、中低域がしっかり吸音されていないからだな!」と気付きました。あともうひとつ、天井の四隅にはどうしても低域が溜まる…という事。そして、その具体的な対処としては「低域を吸収するには、質量のある物が良い。例えば布団とか…」が良いそうです。そこで100円ショップで座布団を4つ(200円×4)買ってきて、天井のコーナーにセットしてみました。これは劇的な効果がありました。今までモッサリしていた低域が一気にスッキリしたのです。

 そしてボックス内全体のさらなる中低域吸音のため、天井もしくは壁の一面に、ファッションセンターしまむらで900円で見つけた布団用の敷パッドを買ってきて垂らしてみました。これも効果抜群で、驚くほど音がスッキリ&ハッキリし、次のボーカルの録音が楽しみなくらいです。ただ、座布団や敷パッドの布類にホコリが溜まると、狭いボックスの中で歌うボーカルの喉や健康に悪影響を与えそうで恐いので、座布団と敷パッドは、歌入れの時以外はビニール袋に入れて大切に管理する事にしました。

f:id:takurokupopZuga:20200813061149j:plain

 あとひとつ、コンデンサマイクを新調した事も録り音に影響していると思います。以前に使っていたマイクは、入力感度がそこそこで、それが逆に扱いやすい面もあったのですが、デッドなボーカルブースの中で使うと、少し音の吸い込みが物足りない面がありました。経年劣化もあったかもしれません。今度購入したAKGのマイクは感度も良く、低音から高音まで、とってもしっかりと拾ってくれます。ウチの自作ブースの中で使うのに向いているかもしれません。

f:id:takurokupopZuga:20200813061234j:plain

 また、リフレクションフィルターの効果も忘れてはいけません。ブース内の余計な反射を遮って、しっかりと声を拾ってくれます。「リフレクションフィルターは音に独特のクセがある」なんて事も雑誌などで聞く事がありますが、ウチの場合で言うと、控えめに言っても、使うデメリットよりもメリットの方がはるかに大きい様です。

f:id:takurokupopZuga:20200813061636p:plain

※価格は当時のものです。

 こうして、とっても危なっかしい我が家のボーカルブースの自作でしたが、何とか、良い音で歌の録音が出来る様になりました。今後も、もし何か音響を改善できるアイデアがあれば実験してみたいと思います。

 そして、これからもマイペースではありますが、新曲を作っていきたいと思いますので、皆さんぜひ宅録ポップユニット『ZUGA』をよろしくお願いします。

 最後に、自作録音ブースの製作にかかった費用ですが、記憶の範囲でザックリと計算して約5万3千円くらいです。市販の防音ブースまたは防音グッズを買おうとすると、10万〜数10万円、有名楽器メーカーさんの本格的な防音室とかだと100万円とかしますので、それを考えると良かったかな?と思っています。

 参考までに、自作の録音ブースを製作するのに使った材料を記しておきたいと思います。

 とりとめもなく、ダラダラと書いた長文&悪文を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

【録音ブースの主な材料一覧】

  • 石膏ボード
  • 木工用ボンド
  • シリコーンシーラント
  • 布粘着テープ
  • 発泡ウレタン吸音材
  • SONEX吸音材 61cm x 122cm×8
  • Scotchの建築用厚手強力両面テープ
  • 座布団×4
  • 敷パッド

【ZUGAの楽曲情報】

f:id:takurokupopZuga:20200813061750p:plain
6月22日にリリースされたZUGAの新曲『車輪』各サブスクにて聴く事ができます。少しフレンチっぽいポップスになっています。

◼️Spotify

https://open.spotify.com/track/64jgBs1bsh0O2vCYnDMQCg?si=mvMYtr0KRXqVZUcyMh8IUQ

◼️AppleMusic

https://music.apple.com/jp/album/%E8%BB%8A%E8%BC%AA-single/1516422854

◼️YouTubeMusic

https://music.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_l9QLnrES-VAUNFdhF_TRo9PfOaNlmzNzU

◼️YouTubeでも試聴できます。

https://m.youtube.com/watch?v=hKEgJY0emF0